~魔法の力の深淵なる実態~

〝根源(パワーソース)〟

 魔法は様々な要素から構成される。その中の、もっとも核となる部分が『根源』と呼ばれるもの、すなわち『パワー・ソース』である。

 パワー・ソースとは、魔法によって発現する様々な効果を現わすものではなく、その効果を導くために必要とされる力のことを指す。

 魔術師の『魔術を発生させる』という行為は、詰まるところ『パワー・ソースから力を引き出し、己の望む形を与える』と言い換えることができる。

 力というものは、実際の世界においては様々な形で発現している。例えば高いところから物体が落下する際には、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されている、等々。これらの力の変遷も『パワー・ソース』のひとつであるといえる。魔術とは、この『力の変遷』においてもたらされるエネルギーを指すと言い換えることができる。

 しかし、残念ながら、奇跡的、非現実的な効果をもたらす『魔術』という分野においては、物質界の物理法則でもたらされる『力の変遷』では到底役者不足である。かような驚異をもたらすためには、もっと激しい『力の変遷』を要する。そして、物質世界にもっとも驚異的な『力の変遷』をもたらすのが、『次元間の力の変遷』である。

 

〝次元転移(トランスファー)〟

 『次元』『世界』『プレーン』等と呼ばれる『ルール』が、DOLL世界に存在している。

 我々人間は、普段は『物質界』と呼ばれる『世界』に住んでいる。多くの者は他の世界の存在を漠然と知っているか、或いはまったく信じていないか、いずれにせよそれらの存在を深く認識しているものはきわめて希である。有り体に云うならば、魔術を極めんと欲する者以外には、事の詳細は知られていない。この事実は、魔術師にとってきわめて重大、根元的な問題であるからである――魔術を恐るるものは、決して『世界の真の姿』に触れてはならない。

 ここでは魔術の基礎となる『力の変遷』『パワー・ソース』と『プレーン』の関係について説明したいと思う。

 前述したとおり、この『物質界』にもっとも強力な『力の変遷』をもたらす現象が『次元遷移』という現象である。

『次元遷移』とは、単純に云えば『次元間を越えて発生する運動エネルギー』である。  重力に引かれたものが上から下に落下するときに位置エネルギーが運動エネルギーに変換されるように、ある『プレーン』から別の『プレーン』に何か(これは、実体、非実体を問わない)が移動する(『プレーン』間の位置エネルギーが運動エネルギーに変換される)際、魔術師達が『摩擦※』と呼ぶ現象により、双方の『プレーン』に非常に強力な『力の変遷』が発生する。これを利用して、魔術師は魔術を編むのである。

 つまり本来魔術師とは、基本的にはすべからく『次元遷移術師~プレーンマンサー~』なのである。

 

【魔法の種類】

〝物理魔法(ソーサリー)〟

 物理世界に干渉する魔法であり、例えば(一見)無から有を生み出すなど物理法則を支配しているとしかいえない現象を巻き起こす魔法を物理魔法と呼ぶ。フリクションによって集めたエネルギーを、物理法則の活性/停滞のために用いるのである。

 非常に手間のかかることではあるが、このようなプロセスを踏まない限り物質界の物理法則そのものに直接干渉することは非常に困難である。例えば『銀』や『毒』、或いはクリーチャーの肉体そのものを操作する術などは、アザープレーンのパワーを変成するよりもずっと手早く、効果的に術を変成することができるのである。

 

〝魔力召喚(エンチャイントメント)〟

 附与魔術とも呼ばれる魔力召喚は、フリクションで生まれるエネルギーそのものを操ることを念頭においた魔法である。純粋に近いエネルギーは、生命体・非生命体に直接導入することによって様々な現象を引き起こす。コンストラクトを生み出す造成魔法は、エンチャントメントの一つの形態である。偏向性に固執せず、いわばワイルドカード的な行使スタイル、ある種『なんでもあり』なスタイルから、秘術協会ではこのスタイルの魔術を『混淆(ケイオティック・アーケイン)』と称する。

 極端な例えではあるが“水の流れる力で水車を動かし、水車の動く力で石臼を挽く”ような偏向性を完全に無視した力の使い方こそ、『魔力召喚』の原理と似ていると言えなくもない。その変性過程での力の損失が大きくなるため、ほとんどの『魔力召喚』は明確な形を持たない魔法効果──例えば精神を操作するなど──を生じさせる。

 

〝感知魔法(ディヴィニング)〟

 個体の『意識世界』間を繋ぐパイプとして存在する『共有意識世界』というものが存在しているとサーペンタイン=サンは考えていた。それを研究・研鑚するのが『感知魔法』或いは『叡智魔法』と呼ばれる系統である。『共有意識世界』は、『意識世界』を媒介とした多くの先人の智慧の結集場所であり、そこには様々な秘密が隠されているという。それらの隠された事実を引き出すのがこの魔法である。  本来、術者たちは、異界とアクセスするだけで恐ろしい量の情報を手に入れることができる。だが、反面、生物の『脳(メタ。DOLL世界では情報の解析、記憶の蓄積、その他は全て『魂』の仕事と認識されている。『脳』の存在は一部の研究者を除き、その存在そのものが否定されている)』が許容できる情報量には限りがあり、異界から流れてくる情報を上手くシャットアウトしないと、モータルの小さな脳では瞬く間にパンクしてしまう。

 また、異界と接触することによって、霊的に活性化するという事実は秘術協会で比較的研究が進んでいる。そのため『魔力感知』など、単純な感知魔術は比較的多くの術者が行使することができるよう整備されている。また、術者自身を霊的に活性化させるために異界の力を引き出す場合もある。そうしてより霊的に活性化された術者は、死者の声を聞き、未来や物事の隠された真実を見通すことが出来るようになるといわれている。

 

〝幻影魔術(イリュージョン)〟

 力の流入により、物質世界にはよく『陽炎(シマリング)』と呼ばれる幻影が発生する。この幻影は基本的には術者の意図とはまったくかけ離れたものなのだが、術の変成技術が未発達だった時代は、この副次作用的に発生する『幻影』を術者の意のままに操るための技術が多数研究されていた。それらが現在の『幻影魔術』の基礎である。

 幻影魔術は、力の流入によって発生する『陽炎』を術者の意図する形に生成するのである。また、魔力で生成した力場を用意することによって、幻像に半実体を持たせることも可能である。

 

〝召喚魔術(コンジャリング)〟

 俗に『契約魔術』とも呼ばれるこの魔法は、生命体との魔法的な契約により、空間を超えて召喚・従属させる魔法である。

 その実体は殆どが異界の、それも『奈落』の悪魔やデーモンとの契約によるものである。というのも、基本的に『契約』という行為によってなんらかの強制力が発生するのは『アストラル・プレーン』の神格(あるいはその眷属)か、『奈落』の悪魔のどちらかしかなく、精霊界の精霊(スピリット)達は契約を重んじない。『アストラル・プレーン』にアクセスする聖職者達は信仰という絆で結ばれた相手とのやりとりを『契約』とは称さないため、勢い『契約魔術』とは『悪魔との取引』であるとみなされる。当然、秘術協会からも『忌術』として研究を禁じられている。

 神聖魔法との違いは、精神力の代わりに知力を必要とすることだろう。召喚魔術では、知力を駆使して悪魔を出し抜かなければ、骨の髄から魂までしゃぶり尽くされてしまう危険がある。それに対して、神聖魔法は相手への忠誠(信仰)を必要とするため、出し抜くという考えはタブーである。

 

〝死霊魔術(ネクロマンシー)〟

 死霊魔術と呼ばれるネコロマンシーは、ネガティブエナジーを直接操る魔法である。ネガティブエナジーは死に通じる領域であり、現在の帝国では『ネクロマンシー』は禁忌中の禁忌として使用を禁じられている。万が一習得や使用、或いは研究していることがばれた場合、ほぼ確実に死罪とされるため、一般の魔法使いは決して手を出さない。

 しかし、この系統の魔術が『不死の生命』への最短距離にあると信じるものも多く、そういった術者は帝国の目を逃れ、隠者のようにこれらの魔術の研究に没頭する。そういったネクロマンサーは例外なく帝国によって懸賞金がかけられている。ポジティブエナジーはネガティブエナジーを打ち消す天敵であるが、ポジティブエナジーを打ち消すのもまたネガティブエナジーであることも忘れてはならない。

 

〝次元魔法(プレーンコントロール)〟

 空間と時間、つまり時空を掌握するための魔法。本来秘術魔法とはこのプレーンコントロールの延長線上に存在していた。つまり、プレーンからパワーを引き出す、という技はプレーンコントロールの技なのである。しかしながら、この魔法分野はサーペンタイン=サンの絶滅と共に失われ、今となっては極々一部の魔法のみが残存している。

 

〝神聖魔法〟

 神の持つアストラルフォースを行使する魔法。聖北教会で教えている奇蹟もこれである。神格ともなると、共有意識世界をかなり自由に使いこなす。そのため、自分に向けられた意思(信仰心)をプレーンを超えて感知することができる。神はこの意思を用いて、術者のプレーンと神のアストラル・プレーンを接続する。そして、アストラルフォースを術者の願う力へと変換し、術者の世界へと送り込むのである。当然、術者のプレーンと神のプレーンは秩序が異なっている。ゆえに、神聖魔法は相手のプレーンに依存した形で発現する。これを『移調』と呼ぶ。

 多くの神格は他のプレーンに干渉するために、『契約』という手段を必要とする(もしくは欲する)。この場合の『契約』とは、当事者双方で取り決めをすることで、通常の手段では成し得ないことを可能にする特殊な力である。神の契約は術者の信仰心を介する場合が多い。術が生贄が必要な場合も、神が求めるのはそれを献げると言う信仰心である。神にとって、イモータルが作るものは興味がないのだろう(興味の無いものを『契約』の対象にしても、大した力は発揮できない)。と言うよりも、神格との『契約』内容が信仰心であるものを神聖魔法と言った方が良いだろう。

 神聖魔法の効果は、術者の信仰心よりも精神力に影響される。これは薄い契約(祈祷文を読み上げるだけ等)による神聖魔法ほど顕著になり、不心得者でも利用できてしまう。だが、濃い契約(常に神を人生の中心にする等)を必要とする魔法は、深い信仰無しには使用出来ない。

 

〝精霊魔法〟

 精霊の力を行使する魔法。精霊宮で教えている魔法もこれである。精霊魔法は術者が元素霊に発声して呼びかけることによって行使される。その発現プロセスは魔法使いのそれとは違い、実際の魔法を生み出すのは元素霊自身である。

 術者は精霊の正しい名を呼び、その精霊に対しての願いを唱える。すると、マイナーエレメンタルはその声を術者の思い(精神力)と共に、元素界にいるエレメンタルに届ける。エレメンタルはこの呼びかけに応じて物質界に現れ、その力を行使することができる。エレメンタルが物質界に持ち込める力の量は、術者の思いに影響される。低レベルの精霊魔法はマイナーエレメンタルをそのまま利用する場合もある。

 実際の精霊魔法だが、レベル4までは、レッサーエレメンタル(ないしマイナーエレメンタル)が力を貸すことが多く、レベル5以上はグレーターエレメンタルが力を貸すことが多い。レベル8以上の精霊魔法は非常に稀であり、習得する機会は非常に少ない。

 

〝祖霊魔法〟

 祖霊を扱う精霊魔法。原理は元素霊を扱うものとほぼ同じである。ただし、彼らを本名ではなく、状況に相応しい名(気の良いお方など)で呼ぶことが重要になってくる。また、精霊魔法に比べて、物質界の祖霊を直接利用するケースが多い。魔女(ウィッチ)の使う祖霊魔法をウィッチクラフト、その他の祖霊魔法をレオクラフト(術者をライオネット)と呼ぶこともある。

 

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